おひとりさま 相続の注意点
2024-09-09
相続については基本的に財産を相続する相続人が存在するケースが多いですが、
現在の未婚率の上昇や少子高齢化の進行で「おひとりさま世帯」が増えています。
【1】「おひとりさま」とは
当初は飲食店などでの一人客を指して言うことが多かったようですが、
近年、「遊園地などグループ利用の多い施設を、一人で利用して楽しむ人」
「精神的に自立しており、一人で行動できる人」など
さまざまな意味で用いられています。
相続に関して言うと、
未婚又は離婚をした後に配偶者のいない人生を歩まれている方、
ご主人や奥様に先立たれ、一人で人生を過ごされている女性や男性が
「おひとりさま」に当たります。
【2】おひとりさまの遺産を相続できる人は?
(1)法定相続人がいる場合
民法では、遺言で指定されていない場合、法定相続分で遺産分割するとされています。
亡くなった方の配偶者は常に相続人となり、
「子(直系卑属)」「父母や祖父母など(直系尊属)」「兄弟姉妹」の順序で
配偶者と共に相続人になります。(直系尊属は年齢的に亡くなっている前提にします)
となると、おひとりさまの場合、配偶者・子(直系卑属)・直系尊属がいないため、
兄弟姉妹が相続することになります。
兄弟姉妹が複数人の場合は、その人数で分割されます。
(2)法定相続人がいない場合
法定相続人がいない場合は、原則として「おひとりさま」の財産は「国庫」に帰属します。
つまり、国のものとなるのです。
ただし、遺言書で指定していれば故人の遺志を尊重した遺産相続ができます。
また、同一生計の内縁の配偶者(事実婚)など一定の条件を満たした「特別縁故者」
が財産分与の申し立てをすることも可能です。
【3】想定されるトラブル
(1)財産内容の把握ができない
おひとりさまの場合、財産内容を生前に伝えておける相手がいないため、
財産内容の把握ができないケースがあります。
現金・宝飾品・居住用不動産などの現物があるものは確認しやすいのですが、
銀行や証券会社などの口座については、以前は通帳や郵便物で把握しやすい状況でした。
しかし、最近は、ネットバンクが増えたことやペーパーレスで通帳がないというケースもあり、
特定が困難になっています。
なお、おひとりさまに債務があり、債権者から申し出があった場合には、
相続財産から債権者への分配が優先されます。
(2)手続きする人がいないケース
おひとりさま以外でも、結婚・離婚・引越し・転職などを機に、
親族と疎遠になってしまうこともあります。
また、親族と疎遠にはなっていなくても、
おひとりさまが高齢の場合、親族や関係者も高齢で、認知症になっている場合もあります。
そのため、おひとりさまに万が一のことがあっても、
すぐに相続の手続きができなかったり、そもそも手続きをする人がいなかったりする可能性があります。
これは、万が一のことがあったときに限らず、老後に病気になった場合も同様です。
【4】生前対策としてできること
(1)推定相続人の確認
まずは自分に本当に法定相続人となる人物がいないかを確認しましょう。
とは言え、相続発生前にたどれる戸籍は、直系親族のみとなりますので、
自分の兄弟姉妹や甥姪まですべてを把握することは難しくなります。
そのため、たどれる戸籍をすべてたどってできる範囲で確認する、
ということになります。
(2)財産目録を作成する
財産目録は、不動産や預貯金、有価証券、保険契約等漏れなく記載しておくことをおすすめします。
その際、本屋等で簡単に手に入るようなエンディングノートを用意すると、
漏れなく記載することもでき、便利です。
(3)遺言書をのこす
遺言書がなければ、親しい友人や知人、内縁関係の方がいたとしても、
裁判手続き後でないと財産を承継させることが難しくなります。
そのため最低限できることとして、遺言書をのこしておくことが必要となります。
遺言書があれば、個人だけでなく、法人を寄付先と指定することもできますので、
慈善事業を行なっている法人や団体を指定することもできます。
(4)任意後見契約を検討する
任意後見契約とは、事前に様々な事項を話し合い契約しておくことで、
万一自分に何かあった場合に、その契約に基づいて財産管理や
その他の対処方法等を任せることができる契約となります。
判断能力があるうちに、自分の希望に寄り添ってくれる専門家と契約を結ぶことで、
万一のための備えがあるという安心感を得ることができます。
生前対策は死後のことばかりではなく、今後の自身の余生にも影響するものです。
ぜひ一度、ご相談ください。
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