月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

ポイント制度の税務について

2024-08-07

ポイント市場の拡大が著しくなってきていますが、

ポイントをめぐる税務等については整理できているとは言い難い面もあります。

現状での税務処理の基本を確認してみます。

 

【1】買手の取り扱い

(1)ポイント取得時

 買手側としてポイントを付与された時点では仕訳は行いません。

 ポイントを付与されたからといっても、まだ何か商品を得たり、

 サービスを受けたりしたわけではないからです。

 仕訳はポイントを利用したタイミングで発生します。
 
(2)ポイント利用時

 ポイント利用時には以下の3つの考え方がありますので、

 いずれかの方法を選択して仕訳を行います。

 ①ポイントを「雑収入」として処理する

 消耗品55,000円の支払いに5,000円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。
 
 使用したポイントは雑収入として処理を行います。
 
  消耗品費 55,000   /   現 金 50,000
                /   雑収入  5,000   

 ②ポイントを「値引」として処理する

 消耗品55,000円の支払いに5,000円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。
 
 使用したポイントは値引として処理を行います。
 
  消耗品費 55,000   /   現 金 50,000
                /   値 引  5,000   
 
 ③現金支払額を基準に処理する
 
 ポイントを会計処理上の収益・費用としない、

 消耗品55,000円の支払いに5,000円分のポイントを充当し、残額を現金で支払った。

  消耗品費 50,000   /   現 金 50,000

 個人的な意見ですが③が実務的にわかりやすく思います。
    

            
【2】売り手の取り扱い

(1)ポイント付与時
  
 買手側と同様にポイントを付与した時点では仕訳はおこないません。

 付与したポイントが利用されるかどうかは、付与時点では不明なためです。

(2)ポイントが利用された時

 ポイントが利用されたら仕訳を行います。

 以下2つの考え方のどちらかを選択して仕訳をします。

 選択については事業者ごとに適当な方法を選択します。

 ①ポイントを「売上値引」として処理

 売上55,000円に対して5,000円分のポイントの利用を受け、残額を現金で受け取った。
 
 利用されたポイントは値引分として処理を行います。
 
  現  金 50,000   /   売 上 55,000
  売上値引  5,000   /

 ②ポイントを「販売促進費」として処理

 売上55,000円に対して5,000円分のポイントの利用を受け、残額を現金で受け取った。
 
 利用されたポイントは販売促進費として処理を行います。
 
  現   金 50,000   /   売 上 55,000
  販売促進費  5,000   /

 

【3】法人カードで貯めたポイントの個人利用

 法人カードのポイントは、法人カードの契約者である法人に所有権があります。

 そのため、ポイントが利用できるからといって、

 役員・従業員が私的に利用してはいけません。

 最悪の場合「業務上横領罪」に問われる可能性があるからです。

 

【4】消費税の取り扱い(買手側)(ポイント値引の場合)

 上記【1】の(2)ポイント利用時①②③毎の消費税の課税仕入れを確認します。

 ①ポイントを「雑収入」として処理する

  消耗品費 55,000   /   現 金 50,000
                /   雑収入  5,000 

  消耗品費の消費税の課税仕入れは55,000×10/110=5,000

  (別途・雑収入分の課税売上としての消費税5,000×10/110=454があります)  

 ②ポイントを「値引」として処理する

  消耗品費 55,000   /   現 金 50,000
                /   値 引  5,000 
  
  消耗品費の消費税の課税仕入れは55,000×10/110=5,000

  (別途・値引分の仕入値引としての消費税5,000×10/110=454があります)

 ③現金支払額を基準に処理する
 
  消耗品費 50,000   /   現 金 50,000

  消耗品費の消費税の課税仕入れは50,000×10/110=4,545

  やはり消費税の事を考慮しても③が単純に感じます。

 

【5】クレジットカード納付について
 
 固定資産税や自動車税などをクレジットカード納付した場合の

 取り扱いを確認します。

 (1)業務の用に供されている固定資産や自動車分

  付与されたポイントはその業務に係る収入・所得となると考えられます。

  またクレジットカード手数料は必要経費になると考えられます。

 (2)業務の用に供されていない固定資産や自動車分

  付与されたポイントは商取引における値引と同様には考えられないので

  臨時・偶発的に取得したポイントとして、一時所得になると考えられます。

  またクレジットカ-ドの手数料については、税金を納付するための支出であり、

  そのあとに付与されるポイントを得るために支出したものでないことから

  一時所得から控除される経費にはならないと考えられます。

  個人的な税金である所得税や住民税をクレジットカード納付した場合も

  同様と考えられます。

 
  まだまだポイントの取得・利用等についての会計・税務の取り扱いは

  徹底されていない実情もありますが、原則を押さえておきましょう。
    
  山口会計 山口

多摩エリアで、創業50年超の業歴を誇る山口税務会計事務所。八王子市・立川市・多摩市に接する日野市(JR中央線豊田駅から徒歩5分)の税理士事務所(認定支援機関)です。税理士業務・会計サポートで中小企業経営者のお悩みを伺っております!
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