会社経営と労働保険の加入義務
2015-04-30
以前、会社・事業を運営する上での
社会保険制度について記載しましたので、
今回はその社会保険のうち、「労働保険」について簡単にまとめてみます。
【1】労働保険とは
労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」といいます。)
と雇用保険とを総称した言葉です。
労働者(パートタイマー、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば、
業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となります。
(1)労災保険
仕事中や職場に向かう通勤中に事故や災害にあった場合に
お金がもらえる制度です。
ここでいう「事故」とは、「ケガをした」「病気になった」
「ケガをして体に障害が残った」「死亡した」などが含まれます。
基本的に会社や事業所が加入し、
その会社で働く人全員に適用される保険です。
あくまでも業務上の事故を補償します。
(2)雇用保険
民間の会社で働く人が、何らかの理由で働けなくなり失業状態となった場合に、
再就職するまでの一定期間、一定額のお金を受け取ることができる保険のことです。
加入要件は
「1週間に20時間以上働き、更に31日以上働き続ける予定の労働者」です。
正社員、アルバイト、パートタイマーに関係なく雇用保険に加入できます。
【2】適用事業所
労働保険の適用事業所となったときは、
まず労働保険の保険関係成立届を所轄の労働基準監督署
又は公共職業安定所に提出します。
その適用事業者は「一元適用事業」と「二元適用事業」に分類されています。
(1)一元適用事業
労災保険と雇用保険の保険料の申告・納付等を
両保険一本として行う事業です。
(2)二元適用事業
その事業の実態からして、労災保険と雇用保険の適用の仕方を
区別する必要があるため、保険料の申告・納付等を
それぞれ別個に二元的に行う事業です。
一般に、農林漁業・建設業等が二元適用事業で、
それ以外の事業が一元適用事業となります。
【3】労働保険料
労働保険料 =
(労働者に支払う賃金総額)× 労働保険料率(労災保険料率+雇用保険料率)
(1)労災保険料率
労災保険料は全額「事業主」が負担することになります。
労災保険料率は事業の種類によって各々細かく設定されています。
(2)雇用保険料率
雇用保険料は「事業主」と「労働者」で分けて負担します。
雇用保険料率は事業の種類によって大きく3種に分けられます。
(3)計算例
1年間に労働者に支払う賃金が310万円
(従業員1名、毎月20万円×12ヶ月+賞与70万円)の小売業を営んでいる場合。
労災保険料率 4%(小売業)
雇用保険料率 15.5%(うち被保険者負担分は6%)
労働保険料 = 賃金総額 ×労働保険料率(労災保険料率+雇用保険料率)
310万(賃金総額)×(4+15.5)/1000(労働保険料率)=60,450円(労働保険料)
【4】未加入事業主への罰金
仮に加入していない事業場の労働者が通勤途中や業務中に災害に遭えば
十分な補償も得られませんし、
高度の障害が残ればその後の生活の問題が残り、
誰からも補償がもらえないとの事態も生じてきます。
(1)事故が発生した場合
労働基準監督署に申告すれば労働基準監督署が事業場に
加入手続きをとらせることにより労災保険給付を受けることが出来ますが、
こうした申告が出来ることを知らなかったとすれば
泣き寝入りせざるを得なくなってしまいます。
(2)罰金
事業主は最大2年間遡った労働保険料及び追徴金と
保険給付のうちの治療費と介護給付以外の給付の最大100%
の負担をせざるを得なくなります。
もし加入していない事業者であれば、最低限の義務ととらえ
労働基準監督署で早急に手続きするのがよいでしょう。