住宅取得資金の贈与について②(相続時精算課税)
2012-12-27
今回は前回のテーマの続きとなります。
親世代から子世代への財産の移転、住宅資金の贈与について整理してみます。
【1】概要
高齢者の資産を次の世代に早めに移転するための制度です。
財産の贈与を受けた者は、相続前の段階で贈与を受けた財産を
使用収益できます。
贈与の対象財産は住宅取得のための現金等の制限は一切ありません。
贈与者の財産であれば全て適用可能です。
この制度を受けると2500万円までの贈与であれば、贈与税はかかりません。
しかし、贈与者が亡くなったときは、遺産にその贈与を受けた財産を加えて
相続税を計算しなければなりません。ここが「相続時精算」の特徴になります。
●利用が多い形態としては
①収入物件の贈与を受ければ、贈与以後そこから発生する家賃等の収入を自分のもの
にできる。
現金などを直接贈与する場合もありますが、今後発生する収入を移転する場合にも
利用できます。
②子供の住宅取得を応援するために
③財産価値が上昇する不動産などの贈与
相続発生時に、贈与した財産を亡くなった者(贈与者)の財産として
計算する際の価額は財産贈与時の価額で計算するので、
財産価値が上昇する財産は上昇分だけ節税となります。
・・・逆に価値が下がる財産はその分だけ実際より相続財産が増えることになります。
●通常不動産等は年数が経過すると価値が下がるのが常なので、この制度を利用する方は
①そこから生まれる収益を移転したい場合。
②財産の名義を早めに変更したい等の理由で行うことが多いです。
●利用時の考慮点
・不動産等の名義変更時に登録免許税や不動産取得税がかかります。
これは相続で移転する場合よりも高なります。
【2】適用要件 原則的な部分を記載します、細かい規定についてはご相談ください。
①贈与者の要件(贈与する者)
贈与するの年1月1日において65歳以上の者であること
但し贈与する財産が住宅取得資金である場合は65歳未満であっても
この制度を適用出来ます。
②受贈者の要件(財産をもらう者)
次ぎの要件をいずれも満たす者
1・贈与者の直系卑属である推定相続人に該当すること
2・贈与を受ける年の1月1日において20歳以上であること。
③住宅の取得に充てるために金銭の贈与を受け、実際にその金銭を
住宅の取得資金に充てていること
居住用不動産そのものの贈与や住宅取得後に贈与を受けた
金銭は対象になりません。
④贈与の翌年3月15日までに住宅の引渡を受け、同日までに居住していること、
又は居住することが確実であると見込まれていること贈与を受けた年の
翌年の3月15日までに物件の引渡を受けることができなければ、
適用を受けられません。
また同日までに住み始めるか、または住むことが確実であると見込まれ
同年の12月31日までに住み始めなければいけません。
⑤建物の登記簿面積が50㎡以上240㎡以下であること
登記簿面積で50m2以上240m2以下の物件が対象となります。
⑥中古住宅の場合は建物の築年数が、マンション等耐火建築物なら25年、
木造等耐火建築物以外なら20年以内であること
中古住宅の場合には築年数の要件があります。
ただし、この年数を超える場合でも新耐震基準に適合
していることについて証明されたものは適用が可能です。
⑦贈与の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の申告を行っていること
贈与税が発生しない場合でも、申告期限内に贈与税の申告が必要になります。
⑧贈与を受ける者の贈与を受けた年の所得金額が2,000万円以下であること
贈与を受ける者のその年の所得が上記金額を超えると適用を受けられません。
【3】実際に住宅購入資金の贈与を受けた場合
住宅購入資金として両親などから資金の贈与を受けた場合、
前回お話した「住宅取得資金の非課税制度」と「相続時精算課税制度」
の2つの贈与税の特例制度の適用を受けることが出来ます。
【4】例示(国税庁HPより抜粋)平成24年の贈与の場合
・平成25年は一部非課税金額が変わります。
平成24年に父から4,300万円、母から1,000万円の住宅取得等資金の贈与を受け、
省エネ等住宅以外の住宅を取得し、
いずれの贈与についても相続時精算課税を選択した場合
●相続時精算課税の特別控除額は、選択した贈与者ごと
(父から母からの贈与ごと)にそれぞれ適用されます。
平成24年中の住宅取得等資金の贈与については1,000万円まで非課税
とする特例があることから、
父からの贈与についてこの特例を初めて適用するものとします。
(1) 父からの贈与
(課税される金額の計算)
4,300万円−〔1,000万円〕(非課税金額)−〔2,500万円〕(相続時精算課税の特別控除額)=800万円
(贈与税額の計算)
800万円×20%(相続時精算課税に係る贈与税率)=160万円(贈与税額)
(注) 相続時精算課税を選択した場合は、暦年課税の基礎控除(110万円)は適用できません。
(2) 母からの贈与
(課税される金額の計算)
1,000万円−1,000万円(相続時精算課税の特別控除額)=0
(注)原則として、住宅取得等資金の非課税制度は受贈者(もらった者)
1人について1,000万円が限度となっているため、
父からの贈与について非課税制度を適用して1,000万円を非課税とした場合には、
母からの贈与については非課税制度の適用を受けることはできません。
前回、今回と贈与・特に住宅取得のための資金の贈与について記載しましたが、制度が複雑なため
説明も大変難しいです、贈与を考える方は是非事前にご一報頂きご相談することをお薦めします。