月刊 山口広記

お客様とのコミュニケーションを大切にする所長・山口の税金とお金と経営の話

在職老齢年金についての理解

2012-10-31

中小企業のお客様、特に60歳を超えた社長で年金の受給対象となる方は
ご自身の役員報酬(給与)と年金との関係を気にされる方が多いです。

 年金と給与の関係で、多くの方が働いて給与を得ると必ず年金が支給停止になる
と思いこんでいるようです。

 一般的に、働きながら受給する年金のことを「在職老齢年金」と言います。

在職老齢年金の調整(支給停止・一部支給停止)の対象になるのは、

厚生年金保険の被保険者(給与をいただいて、厚生年金の天引きをされる方)になった場合です。

給与の月額(総報酬月額相当額)と年金の月額(基本月額)との合算額によって

支給停止の対象になるのかどうかが決まってきます。

注目すべき点は次の2点になります。

A厚生年金保険が適用されない者・厚生年金保険に加入していない者であれば
 「在職老齢年金」の調整対象にならない。

  →年金は満額受け取れる

 この場合は厚生年金に加入しているか否かにより判断できるので明白です。

B厚生年金加入者が働いた場合は、必ず年金全額が支給停止となるのではなく、
 給与と年金の合計額に応じて、年金の支給停止額がきまる。

 この場合は仕組みの理解が必要になります、仕組みを理解した上でご自身の

給与を決めるのも一つの方法です。

計算の仕組みについては2段階に分かれます。

(1)60歳台前半の在職老齢年金

基 本 月 額:加給年金額を除いた特別支給の老齢厚生年金の月額

総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12

_____________________________________________________

●計算方法
在職老齢年金による調整後の年金支給月額=

・計算方法 1:基本月額-(総報酬月額相当額+基本月額-28万円)÷2

・計算方法 2:基本月額-総報酬月額相当額÷2

・計算方法 3:基本月額-{(46万円+基本月額-28万円)÷2+
                        (総報酬月額相当額-46万円)}

・計算方法 4:基本月額-{46万円÷2+(総報酬月額相当額-46万円)}

※ 厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと
仮定して計算した老齢厚生年金の年金額をもとに基本月額を算出します。

※ 年金支給月額がマイナスになる場合は、年金は全額支給停止となり、加給年金額も
支給停止となります。

(2)65歳以降の在職老齢年金

基本月額:加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額

総報酬月額相当額:(その月の標準報酬月額※)+(その月以前1年間の標準賞与額※の合計) ÷12

※70歳以上の方の場合には標準報酬月額に相当する額、標準賞与額に相当する額となります。

_____________________________________________________
・厚生年金基金に加入していた期間がある場合は、厚生年金基金に加入しなかったと仮定して計算した

     老齢厚生年金の年金額をもとに基本月額を算出します。  
  
・年金支給月額がマイナスになる場合は、老齢厚生年金(加給年金額を含む)は全額支給停止となります。  
  
・昭和12年4月1日以前生まれの方は、調整対象ではありません。   

・老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります。
  
・70歳以上の方については、厚生年金保険の被保険者ではありませんので、保険料負担はありません。

 

   かなり長文になり申し訳ありません、ただ会社経営上の重要な経費である役員報酬の決定の際には、

   必ず考慮しなければならない事項です。制度をよく理解し、法人税・所得税・住民税に関して個人・法人を

   総体的に捉えて考える際の必要項目と考えます。

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