実態貸借対照表とは
2019-05-09
決算書は「貸借対照表」「損益計算書」で構成されています。
今回は「貸借対照表」のことを深堀りしていきます。
数値はサンプルです。
【1】企業において毎期作成されている貸借対照表
企業の実態を正確に表しているとは言い切れない部分があります。
資産性に乏しい勘定科目が含まれていたり、
経理処理に一貫性を欠くケースもあります。
特に不動産等の資産についてはその時の時価ではなく
購入時の取得価額で記載されています。
つまり、資産の含み益や含み損については、計上されていません。
このこと自体は一定の公正な会計基準に基づき作成
されている限り間違いではないのですが。
【2】実態貸借対照表
資産と負債を原則として時価で評価して、実態に近い貸借対照表を
作成することで、より財務状況が明確になります。
言い換えますと、適正な価額で評価し直すことにより
会社の実際の資産負債の状況が把握できます。
(1)作成手順
基本的には下記に着目して作成します。
①回収不能の資産がある場合は、回収可能額に修正
②時価のある資産については、時価ベースに修正
③粉飾によって実態と乖離している資産については、
実態ベースに修正します。
例えば
・売掛金や貸付金等の債権は、相手先の資力等も勘案して、
回収可能額で評価します。
・在庫や商品、製品で、陳腐化する等して価値が毀損しているものは、
実際の売却可能額で評価します。
・不動産は鑑定(場合によっては、簡易鑑定)や市場価格による
時価に置き換えます。
(2)資産だけでなく負債も時価に
例えば
・リース、退職金その他の労働債権で未計上のものを計上します。
・未計上の債務保証、割引手形、損害賠償、製品引渡後の保証履行等も、
その発生可能性を勘案し、適切に計上します。
【3】実態貸借対照表からわかること
(1)実質的に債務超過か明確になる
①「資産超過」とは、
会社の資産総額の方が、債務総額よりも多額である状態をいいます。
②「債務超過」はその逆で、
会社の資産総額よりも、債務総額の方が多額である状態をいいます。
③通常の貸借対照表では資産超過であったとしても、
実態貸借対照表上で債務超過となる場合が生じてきます。
このような場合、例えば第三者への事業承継では値が付かないことも考えられます。
(2)純資産額が企業価値評価の目安となる
実態貸借対照表における純資産額(資産総額から負債総額を控除した金額。)は、
株式が上場されていない、中小企業の価値を評価する際の重要な目安となります。
したがって、この実態貸借対照表における純資産額は、
第三者へ株式を譲渡する場合において、株式の譲渡価額の重要な基準にもなります。
(3)銀行の融資基準
銀行では、融資を検討する際、企業から受け取った決算書を
「あくまで帳簿上のもの」と見て、決算書の中の貸借対照表を実態通りに修正する、
という作業を必ずします。そのうえで財務内容が健全かどうか査定します。
【4】理解して生かす
実態貸借対照表については、日々の企業経営上作成するものではないかもしれませんが
銀行融資を受ける場合、自社の株価を算定する場合には必要な知識です。
時価と乖離している部分だけを修正すれば作成できるものです。
現状の企業価値を確認してみましょう。