抵当権・根抵当権の特徴
2021-05-10
マイホ-ム購入時や事業資金の借入時に
不動産に抵当権を設定することがあります。
その性質の基本を確認します。
【1】抵当権とは
抵当権とは、金融機関から住宅ローン等の借り入れなどを行う際に、
万が一、借入金の返済ができなくなったときのため、金融機関や保証会社
が抵当権者となって不動産を担保に取る権利のことを言います。
抵当権は、物件の登記簿の乙区欄に設定されます。
抵当権が設定されても、債務者(お金を借り入れた本人)は担保となった
不動産を明け渡す必要はなく、これまで通り使用し続けることが可能です。
もし、債務者の支払いが滞納した場合は、抵当権者は担保のついた不動産
を競売にかけるなどして、その売買代金から弁済を受けることになります。
このような抵当権が設定された不動産のことを「抵当物件」と言います。
【2】根抵当権とは
根抵当権は、上記抵当権の設定を契約する際に
「極度額」(上限金額)と「債権の範囲」を定めます。
一度極度額と債権の範囲を設定すれば、
その範囲内で何度でも借り入れと返済を繰り返すことができます。
そのため企業が事業資金などの融資を受ける際に使われることが多くなります。
【3】抵当権と根抵当権の違い
(1)担保対象債権が限定されず何度でも借り入れできる
①抵当権の場合
特定の1つの債権(借入金)に対して1つの抵当権を設定します。
設定内容には担保する債権を限定するために、
契約の日付・種類・金額・返済期・利率等など債権の詳細が記載されます。
対象となる債権を限定し、それ以外の債権を担保しません。
②根抵当権の場合
あらかじめ「極度額」「債権の範囲」を定め、
その範囲内でさまざまな債権を担保することができます。
金銭消費貸借契約での融資や手形貸付について、
極度額の範囲内で何度でも担保するというものです。
(2)優先弁済の範囲
①抵当権の場合
担保の原因となる債権の元本および最後の2年間分の利息・損害金
についてのみ優先弁済を受けることができます。
2年以上前に発生した利息・損害金については、
抵当権による強制回収はできません。
②根抵当権の場合
設定された極度額を上限に、期限には関係なく優先弁済が受けられます。
ただ、極度額ぎりぎりまで融資していた場合には、
極度額が強制回収の上限になることから、
それを超えた利息・損害金は回収できません。
【4】抵当権の性質
(1)物上代位性
たとえば抵当権が設定されている建物(火災保険加入済)が火事で消滅したら、
建物自体がなくなるので抵当権は消滅するのではなく、
建物が保険金に姿を変えたとみて、保険金(代位物)
を差し押さえてよいことになります。
(2)不可分性
抵当権は、被担保債権を全額弁済しない限り消滅しません。
5000万円の被担保債権のうち4000万円弁済しても、5分の1に減るわけではなく、
全額を完済するまで土地全体に抵当権を行使できます。
(3)付従性
弁済などによって被担保債権がなくなれば、抵当権も消滅します。
また、契約が錯誤で無効だった場合など、最初から被担保債権が
成立していないので抵当権は成立しません。
(4)随伴性
被担保債権が債権譲渡などで移転すると、それに伴い担保物権も移転する性質を言います。
例えば、AがBに1,000万円を貸し付けてBの所有する土地に抵当権を設定した場合に、
Aがその債権をCに譲渡したときは、特約がない限り抵当権もCに移転することになります。
【5】実態把握
金融機関からの借入金があり、かつ 不動産を所有している場合
あらためて内容の確認をしましょう。
確認内容としては
①借入金の残高・返済期間
②抵当権・根抵当権の有無
③信用保証協会の保証の有無
④抵当権が設定された不動産の時価
⑤連帯保証人の有無
現状把握は大事です。
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