暦年課税と相続時精算課税 選択時の注意点
2024-06-05
暦年贈与について相続税の加算対象となる期間が変更され、
相続開始前3年以内から7年以内へ改正されました。
また相続時精算課税に基礎控除が創設され、年間110万円が控除されます。
選択時の注意点を確認します。
【1】暦年贈与
(1)非課税枠(基礎控除)110万円を超えた場合
暦年課税の場合、基礎控除額の110万円を超えると、
超えた分に対してだけ贈与税が課されます。
税金を納めるのは受贈者(もらった人)です。
受贈者(もらった人)は複数人から贈与を受けた場合でも、
基礎控除額は年間110万円で変わりません。
(例:3人から貰っても330万円の控除にはなりません)
(2)贈与者(あげる人)が死亡した場合の相続税
暦年贈与で貰ったものは、原則として贈与者(あげる人)
が死んでしまった場合でも、基本的には相続税の対象にはなりません。
ですが、相続が開始する前7年以内に贈与されたものは
相続税の対象として加算されます。
(3)加算対象者
(2)の生前贈与加算のルールは、誰に対しても適用されるわけではありません。
対象になるのは「相続または遺贈(遺言で財産をもらうこと)により財産を取得した人」
に限られています。
相続人である配偶者や子に対して被相続人が行った、
相続開始前7年以内の贈与については、原則として生前贈与加算の対象に含まれます。
ただし、相続人であっても、相続時に何も相続しなければ、
生前贈与加算の対象にはなりません。
相続時に何も相続していないのであれば、被相続人からの贈与について、
最後の7年間の贈与額は相続税の課税対象にはならず、
通常の贈与税の課税関係だけで完結するのです。
(4)孫への贈与
相続人ではない孫への生前贈与は、原則として生前贈与加算の対象になりません。
ただし下記の場合は加算対象者になるので注意が必要です。
①孫が代襲相続人の場合
代襲相続とは、相続人となるはずであった子または兄弟姉妹が、
被相続人より先に死亡した等で相続人になれない場合に、
その人の子・孫など本来は相続権のない人が代わりに相続人になることをいいます。
②遺言書がある場合
「私が死んだ後は孫に財産を渡します」といった遺言書がある場合には、
孫であっても生前贈与加算の対象になります。
③死亡保険金の受取人の場合
死亡保険金の受取人が孫になっている場合も、同様に対象になります。
【2】相続時精算課税
(1)基礎控除110万円と2,500万円の特別控除
年間110万円の基礎控除額という税金がかからない金額枠があります。
また贈与をする人ごとに2,500万円が特別控除となります。
相続が開始されるまで何度贈与を受けても、
その累計額のうち2,500万円まで、贈与税が非課税になるのです。
(2)非課税限度額を超えた場合
相続時精算課税では、贈与した合計額(毎年110万円まで加算しない)
から特別控除の2,500万円を引いた額に、一律20%の贈与税が課税されます。
(3) 贈与税の申告
110万円までは申告する必要がありません。
なお、相続時精算課税を選択して贈与を受けた人は、相続時精算課税選択届出書
(この制度を選択しようとする贈与者から受けた最初の贈与に係る申告の時に限ります。)
を提出する義務があります。
(4)贈与者(あげる人)が死亡した場合の相続税
相続時精算課税は、その名の通り「相続時精算」で課税をする制度ですので、
贈与者が死亡した場合は相続税の適用対象として、相続財産に加算されます。
ただし、相続開始以前に贈与税の支払いがあった分は、相続税額から控除されます。
(5)相続時精算課税制度を選ぶべき人
ケ-スバイケ-スですが下記のケースが参考になります。
①短期間で大きな金額を移動させたい人
②将来、値上がりする財産がある人
③収益不動産を贈与する場合
④贈与者が比較的高齢で基礎控除内の財産をコツコツと資産移動したい人
【3】その他の注意点
(1)相続時精算課税制度は1度選択すると変更できません(暦年課税に戻せない)
(2)相続時精算課税制度を選択する場合、選択初年度が110万円以下の贈与であれば
相続時精算課税選択届出書の提出のみでよいです。
(3)受贈者が1人でも、贈与者ごとに選択できる
例えば子供が両親から贈与を受ける場合
父からの贈与は相続時精算課税制度を選択、母からの贈与は暦年課税とする場合、
それぞれの制度で110万円の控除を適用できます。
贈与については家族構成、財産内容を考慮してそれぞれの制度を最適に選択しましょう。
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