生産緑地2022年問題とは?
2020-09-08
2022年に不動産の価格に影響を与えると言われている、
「生産緑地2022年問題」をご存知でしょうか。
【1】生産緑地 とは?
「生産緑地」は、市街化区域内の農地のうち、
防災や環境の観点から保全される条件を満たした農地を言います。
「市街化区域」とは、優先的に市街化を図る区域を言います。
都市化が進む市街地の中に「生産緑地」を設けることで、
緑地の持つ防災機能や緑地と調和する都市環境を守るというのが
主な目的です。国土交通省のデータによると、全国には12,972.5ha
東京ドーム約2,760個分の「生産緑地」があります。
さらに、その約1/4が東京都の「生産緑地」です。
「生産緑地」の指定を受けると、
30年間農業を続ける義務と開発に対する規制を受けます。
その代わりに、固定資産税の軽減や相続税納税の猶予など、
税制上のメリットを受けることができます。
【2】2022年問題”とは?
現在の「生産緑地」の指定は、1991年の生産緑地法の改正を受けて
1992年にスタート。
当時、多くの土地所有者が「生産緑地」の指定を受けました。
通常「生産緑地」は、指定から30年後に、
自治体へ買い取りを申し出ることができます。
2022年に、面積ベースで約8割にあたる「生産緑地」
が指定から30年が経過し、
一斉に自治体に向けて買い取り請求をすると予想されています。
【3】生産緑地の買取申し出
生産緑地法の改正当時、30年後に自治体に時価で買い取りされる想定でしたが、
実際には予算が足りず、買い取りされないケースが多いのが実情です。
「生産緑地」の指定から外れた農地は、
これまでより高額な固定資産税を払う必要があり、
土地を手放す所有者も多く出てくるでしょう。
土地が民間に売りに出され、宅地として利用されるケースが増えれば、
住宅やマンションなどの不動産の供給過多が起こり、
周辺の不動産価格の急激な下落が起こるかもしれないと予想されています。
【4】生産緑地法が改正
2022年問題を懸念して、2017年に生産緑地法が以下のように改正されました。
(1)特定生産緑地指定制度
生産緑地に指定されている農地を「特定生産緑地」に指定することで、
引き続き固定資産税の軽減や相続税納税の猶予が受けられます。
「特定生産緑地」の営農義務期間は10年間。期間終了後に再度指定を受ければ、
さらに10年間延長されます。
(2)面積要件・制限の緩和
生産緑地として指定できる一団の面積が、「500㎡以上」から「300㎡以上」になり
以前より小さな農地も生産緑地に指定できるようになりました。
また制限も緩和され、農産物の加工施設や農産物直売所、
農家レストランなどが設置できるようになりました。
(3)都市農地貸借法の新設
2018年に都市農地貸借法が成立し、
それまで禁じられていた農地の貸出しが可能になりました。
後継者がいなくても農業をやりたい人や農家レストランを
開きたい人などに貸し出すなど、選択肢が広がりました。
結果として
宅地に転用される生産緑地の面積は少なくなると見られています。
不動産の売買を考える方にとって目を離せない問題です。
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