相続時精算課税制度の改正!!
2023-04-10
2023年度税制改正において注目すべき改正が成立しました。
内容を確認してみましょう。
【1】相続時精算課税制度とは
(1)改正前の内容(この部分については基本的に変更はありません)
①相続時精算課税制度とは、原則として60歳以上の両親や祖父母などから、
18歳以上の子や孫などへの贈与について選択により適用できる制度です。
選択後は同じ贈与者・受贈者間での贈与については2,500万円までが非課税、
2,500万円を超えた部分に対しては一律で20%の贈与税がかかります。
②ただし、相続が発生して相続税を計算する際には、
精算課税の適用を受けた贈与すべてを相続財産に足し戻し、
相続税の課税対象にしなければなりません。
この際、既に支払った贈与税については、相続税から控除されます。
③相続時精算課税制度を一度選択すると、
同じ贈与者・受贈者間での贈与については暦年贈与に戻すこともできません。
④相続時精算課税制度は、次世代への財産移転を生前にできる制度ではありますが、
最終的には贈与税を相続税で精算する課税の繰り延べ制度となります。
(2)相続時精算課税制度の改正ポイント
①年110万円の基礎控除が創設
相続時精算課税制度の適用を受けた贈与については、
その全額が相続財産への持ち戻し対象となっていましたが、
改正後は年110万円以下の部分については持ち戻す必要がなくなります。
②手続きも一部省略されます。
改正前は相続時精算課税制度の選択をすると、
その贈与者からの贈与を受けた年は金額にかかわらず
必ず贈与税申告をしなければなりませんでしたが、
改正後は110万円以下であれば贈与税申告も不要となります。
(3)注意点
相続時精算課税制度の選択をすると年110万円以下については贈与税申告不要、
相続時の持ち戻しも不要となります。
つまり贈与税も相続税もかからない贈与ができるようになります。
この110万円は暦年贈与の基礎控除110万円とは別枠になりますが、
相続時精算課税制度と暦年贈与の併用はできませんのでご注意ください!!
(4)適用開始
相続時精算課税制度に年110万円の基礎控除が適用できるようになるのは、
2024(令和6)年1月1日以降の贈与からとなります。
2023年中の贈与を考えている方は2024年まで待つか悩むこともあると思います。
【2】暦年贈与についての改正
(1)生前贈与加算
通常、生前贈与した財産に対しては相続税の対象とはなりません。
しかし、死亡日から遡って3年以内に相続人に対して行った贈与に関しては
「生前贈与加算」が適用され、相続税の課税対象となるので注意が必要です。
(2)生前贈与加算の適用期間は、2023年の税制改正によって7年に延長
生前贈与加算対象期間が延長されることで、
相続開始から7年以内に行われた生前贈与に対しては相続財産に加算されます。
そのため、実質的には増税となり、
相続・贈与を受けた方の税負担が増える可能性もある点に注意が必要です。
加算額は贈与した時期に応じて下記の通りとなります。
①2023(令和5)年12月31日以前に生前贈与した場合
亡くなる3年前までの贈与財産に対して全額
②2024(令和6)年1月1日以降に生前贈与した場合
亡くなる3年前までの贈与財産に対しては全額
亡くなる4~7年前の贈与財産に対しては100万円を除いた全額
【3】改正後は暦年贈与と相続時精算課税のどちらが最適か?
これはケースバイケ-スなので確定的な話はできません。
贈与する方の財産状況、年齢などの状況を考慮した上での
ニーズに合った使い分けが必要になります。
ただ今回の改正により、相続時精算課税制度を利用した方が
暦年贈与よりも無税で財産移転をできる方は増えると思われます。
相続時精算課税制度については財産移転上有利な改正となりますが、
必ずしもベストな選択になるとは限りません。
興味のある方はぜひご相談ください。
山口会計 山口