税制改正大綱を閣議決定「年収103万円の壁」見直しなど
2025-01-09
個人関係を中心に内容を確認してみましょう。
【1】103万の壁
(1)103万の壁の内容
所得税の基礎控除額が48万円で、給与所得控除が55万円。
年間給与額が合計の103万円を超えると所得税がかかることから「働き控え」
につながっていると指摘されています。
また、扶養する子供がアルバイトなどで年収103万円を超えると、
扶養控除がなくなるため、親の税負担が増えることになります。
(2)改正案の内容
所得税について基礎控除と給与所得控除をそれぞれ10万円ずつ引き上げる方針が示されました。
合計で123万円となり国民民主党の求める178万円までは及ばなかったものの
多少の成果は期待できそうです。
まだまだ今後も与党と国民民主党の協議や国会論戦が行われることになります。
今回の与党案からは何らかの修正が加わることも見込まれます。
(3)地方税の住民税について
地方税である住民税の給与所得控除の額も見直されます。
所得税と同様に給与所得控除を10万円引き上げて65万円となります。
ただその一方で、基礎控除については、地方から大幅な減収への懸念が示されていたことも踏まえ、
据え置くとされています。
(4)実務的な対応
年末調整で対応するかたちで令和7年から実施されます。
【2】特定扶養控除
19歳以上23歳未満の子供を持つ親を対象とする特定扶養控除について、
子供の年収要件を引き上げる方針が示されました。
この改正により、大学生などのアルバイト収入が増えても、
親が受けられる税制上の優遇措置が維持されます。
年間給与額が123万円を超えたあとは「特定親族特別控除」となり、
150万円を超えた後も、控除額を段階的に減らす仕組みを導入し、
収入が増えたにも関わらず世帯としての手取りが減ることはないようにします。
(配偶者特別控除同様、201.6万円までとなります。)
(1)対象者:19歳以上23歳未満の扶養親族を持つ納税者
(2)子供の年収要件:103万円以下から150万円以下に引き上げ
(3)控除額:所得税63万円、住民税45万円(変更なし)
(4)適用開始時期:所得税令和7年分、住民税令和8年分
【3】配偶者特別控除
パートで働く妻などを扶養する世帯の税負担を軽減されます。
「配偶者特別控除」についても、
「配偶者控除」と同様の控除が受けられる配偶者の年収要件が、
いまの年間給与額150万円から160万円に引き上げられます。
【4】子育て世帯に対する住宅ローン減税等に係る所要の措置の延長
子育て世帯及び若者夫婦世帯を対象とした住宅ローン減税の優遇措置が、
令和7年12月31日まで1年間延長されます。
新築住宅等が対象となります。
(1)対象:子育て世帯(18歳以下の子どもがいる世帯)
若者夫婦世帯(夫婦のいずれかが39歳以下の世帯)
(2)控除対象借入限度額:長期優良住宅・低炭素住宅:5,000万円
ZEH水準省エネ住宅:4,500万円
省エネ基準適合住宅:4,000万円
(3)控除期間:13年間
(4)控除率:0.7%
(5)適用期限:2025年(令和7年)12月31日までに入居した場合
(6)所得要件:合計所得金額2,000万円以下
(7)床面積要件:40㎡以上(合計所得金額1,000万円以下の場合)の緩和措置も延長
(本来は50㎡以上)
【5】生命保険料控除制度の拡充
現行制度では、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つの区分で、
それぞれ最大4万円の所得控除が認められています。
今回の改正により、各区分の控除限度額が6万円に引き上げられます。
(1)対象:23歳未満の扶養親族がいる場合
(2)一般生命保険料控除の適用限度額:所得税において現行の4万円から6万円に引き上げ
(住民税も、同様の引き上げ措置を検討中)
(3)合計適用限度額:一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計で現行の12万円を維持
(4)一時払い生命保険料:控除対象から除外
(5)適用時期:令和8年分
個人関係の改正案で気になるところは以上ですが、
特に103万の壁は123万円に増額されていますが、今後も与野党間の
話し合いが継続され変更になる可能性もあります。
また特定扶養控除の子供の年収基準も150万円に引き上げられましたが、
社会保険の106万円の壁(現行従業員数50人以下の事業所で働く方は130万円)
については見直しがされていません。
106万円を超えるような労働供給は見込みが薄いと思われます。
まだまだ議論が続くと思います、今後に注視しましょう。
山口会計 山口