空き家特例
2023-07-19
空き家特例とは
空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
については2023年(令和5年)度税制改正において見直し・延長がされています。
実務的にも毎年数件の相談があります。
内容を確認してみましょう。
【1】相続した家を放置するリスク
空き家が劣化して特定空き家に指定されると、
固定資産税が6倍になるケースもあります。
通常の空き家には「住宅用地の特例控除」
という固定資産税を軽減する特例が適用されています。
しかし、空き家が劣化して安全性や衛生、景観などに
問題があると特定空き家に指定されてしまいます。
特定空き家に指定されると「住宅用地の特例控除」適用外となり、
固定資産税が跳ね上がることになります。
住む人のいなくなった空き家は湿気が溜まりやすく、
家が急激に劣化します。
劣化を防ぐためには手間・時間だけでなく費用もかかります。
【2】空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除
(1)制度の概要
相続または遺贈により取得した被相続人(「亡くなった人」)が居住していた家屋やその土地を
一定期間内に売却し、定められた要件に当てはまる場合は、
譲渡所得の金額から最高3,000万円を控除できる制度です。
(2) 適用要件
①適用期間の要件
相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ、特例の適用期間である
2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日
までに譲渡することが条件となります。
②相続した家屋の要件
1)相続開始の直前において被相続人が一人で居住していたものであること
2)下記AとBの要件を満たす場合も被相続人が相続開始の直前に居住していたものとして
認められます。
A・被相続人が介護保険法に規定する要介護・要支援認定を受け老人ホーム等に入所し、
かつ、相続の開始の直前まで老人ホーム等に入所をしていたこと。
B・被相続人が老人ホーム等に入所をした時から相続の開始の直前まで、
その家屋について、その被相続人による一定の使用がなされ、かつ、
事業の用、貸付けの用又はその被相続人以外の者の居住の用に供されていたことがないこと。
3)1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された区分所有建築物以外の建物であること
・・・この要件を満たさないことが結構見受けられます・・・
③譲渡する際の要件
1)譲渡対価の額の合計額が1億円以下(共有で譲渡する場合には合計額が1億円以下)であること
2)相続人が家屋を譲渡時までに取壊して売却すること、
又は耐震リフォーム等により譲渡時において耐震基準に適合することが
証明された家屋の売却であること
④2024年(令和6年)1月1日以後に行う譲渡についての改正内容
・・・【2023年(令和5年)度税制改正】
対象家屋につき譲渡時から譲渡した年の翌年2月15日までに、
取壊しが完了した場合又は耐震基準に適合することが証明された場合は、
本特例が適用可能となりました。
また対象となる土地家屋を取得した相続人が3人以上の場合の
特別控除額は2,000万円となります。注意が必要です。
⑤他の特例との適用関係
1)自己居住用財産の3,000万円特別控除又は自己居住用財産の買換え特例
のいずれかとの併用が可能
(同一年中に空き家の3,000万円特別控除と自己居住用財産の3,000万円特別控除
とを併用する場合には、2つの特例合わせて3,000万円が控除限度額となります)
2)住宅ローン控除との併用が可能
3)相続財産を譲渡した場合の相続税の取得費加算とは選択適用
【3】参考・譲渡所得の計算
(1)計算式
譲渡所得の金額は、下記の計算式のとおり、
土地や建物を売った譲渡価格から取得費と譲渡費用を差し引いて計算し、
計算した譲渡所得を基準に税額が決まります。
したがって、特別控除が使える場合は節税になります。
譲渡取得=譲渡価格(収入金額)-必要経費(取得費+譲渡費用)-特別控除額(適用がある場合)
(2)取得費
取得費は、不動産の購入代金や、購入手数料などに、その後支払った改良費などを加えた
合計額を指します。
建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を引いて計算します。
なお、土地や建物の取得費がわからない場合は、
譲渡価額の5パーセントを取得費(概算取得費)とすることが認められています。
(3)譲渡費用
不動産を売却するために支出した費用です。
仲介手数料や測量費などが該当します。
相続後の空き家について放置を防止するための施策
となります。該当する方は早めの検討を。
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