限定承認とは
2024-04-10
相続で親に思わぬ借金があった場合に限定承認が選択肢の一つとなります。
少し掘り下げてみましょう。
【1】相続の方法
(1)単純承認
資産と負債をすべて引き継ぐ方法です。
(2)相続放棄
資産と負債をすべて引き継がない方法です。
(3)限定承認
資産の範囲内で負債を引き継ぐ方法です。
【2】限定承認が有効なケース
(1)相続財産がどのくらいあるのかよくわからない場合
限定承認をしておくことで、借入金があるとわかっても、
プラスの財産の範囲内で弁済するので安心です。
また、マイナスの財産しかないと思っていても、
後からプラスの財産が判明することもあります。
相続の放棄を撤回することは原則できないので、
財産が不明の場合は限定承認が有効な場合もあります。
(2)事業を継いでいきたい意思があり
相続財産の範囲内で借金を引き継いでも大丈夫だと判断した場合
限定承認することでプラスの財産を上回る借入金の弁済義務はなくなりますので、
被相続人が経営していた事業を引き継ぎたい場合など、
将来性のある資産を手放さずに済む場合もあります。
(3)実家を残したいなど、債務があっても相続したい特定の財産がある場合
マイナスの財産のほうが多いことはわかっているけれど、
思い出のある実家まで手放したくない。
そのような場合も、限定承認をしておくことで残せる可能性があります。
【3】注意点
(1)相続人全員が限定承認する必要がある
相続人間で意見が一致しなければ限定承認による相続はできません。
これは限定承認の最大のデメリットといえるでしょう。
(2)相続財産に手を付けることができない
限定承認を選択したとしても、
その手続きが終わるまでは相続財産を処分するなどの行為はできません。
もし一人でも相続財産に手を付けた場合には、
単純承認を選択したとみなされることになり、
限定承認の手続きを継続することができなくなります。
その場合、マイナス財産についても全て相続することになってしまい、
非常に大きなリスクを伴う可能性があります。
(3)申請までに手間や時間が掛かる
限定承認を希望しない相続人がいれば、説得する、
もしくは相続放棄してもらえるのかについても協議が必要となります。
相続人全員の協力体制が必要であり、限定承認には手間と時間が掛かります。
(4)受理された後も、更に手続きがある
限定承認に関する書類を裁判所に提出し、受理されてもそこで終わりではありません。
限定承認は遺産の範囲内で負債を弁済し、超過分については負債を負わないとするため
公正な清算手続きが必要です。
そこで、官報という政府の機関誌を使って、限定承認を行う旨を公告し、
債権者へ権利の申し出を促すことになります。
公告期間経過後に、申し出のある債務について、
遺産の範囲内で弁済・清算を行っていくことになります。
限定承認の手続き開始から完了まで1年以上かかることも少なくありません。
(5)限定承認の期限は3ヶ月
限定承認を選ぶのであれば、
相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述申請が必要です。
【4】手続き方法
大まかに下記の流れになります。
(1)申述書類一式を管轄の家庭裁判所へ提出
(2)限定承認の受理(家庭裁判所から通知が届きます)
(3)官報へ限定承認を選択した旨及び債権者の申出について公告
(4)必要な場合には鑑定人選任申立てを行い、先買権を行使する
(5)相続財産の現金化(換価業務)
(6)債権者等へ相続財産による弁済
(7)弁済後に残余財産がある場合には、相続人で遺産分割協議の上、財産を取得
上記のように限定承認は手続が複雑であり時間もかかります。
選択をする場合は早急に専門家に相談しましょう。
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