2023年4月施行の民法改正②
2023-03-15
前回に引き続き2023年施行の民法改正のポイントを確認します。
【1】遺産分割の新ルール導入
(1)現行の問題点
相続開始と同時に、遺産(土地・建物や預金など)は
法定相続人全員の共有状態となります。
その後、遺産分割がされないまま長期間放置されると、
遺産の管理・処分が困難になります。
(2)早期の遺産分割を促進する仕組み
①相続開始から10年経過後の遺産分割のルール
被相続人の死亡から10年を経過した後にする遺産分割は、
寄与分や特別受益の主張はできず、
原則として法定相続分によることとなります。
②改正法の施行前に相続が開始した場合の遺産分割の取扱い
改正法の施行日前に開始した相続についても、
改正法による新ルールが適用されます。
ただし、経過措置により猶予期間が設けられ、
「相続開始時から10年経過時」又は「改正法施行日から5年経過時」
のいずれか遅い時が具体的相続分による遺産分割の期限となります。
【2】相隣関係の規定の見直し
(1)現行の問題点
隣地の所有者が不明の場合などは、近隣の土地所有者は
境界の確定や越境した枝の切り取り等の同意が得られず
土地の円滑な活用を妨げることになります。
(2)改正の主要3項目
①隣地使用権の見直し
隣地使用権の範囲が拡大され、以下の場合に隣地を使用することが認められました。
1)境界線付近において、建物などを築造・撤去・修繕する場合
2)土地の境界標(土地の境界を示すための目印)の調査・境界に関する測量をする場合
3)隣地の枝が自分の土地に越境してきている際に、
民法233条3項の規定によりその枝を切除する場合
②ライフライン設備の設置・利用に関する権利の明確化
電気、ガス、水道などの現代的なライフラインを念頭に、以下2つの権利が明確化されました。
1)必要な範囲で他の土地にライフライン設備を設置する権利
2)他人が所有するライフラインの設備等を使用する権利
③越境した枝を自ら切除できる権利の創設(改正民法233条)
以下の場合には、越境された土地の所有者は、
越境した枝を自ら切除することができるようになりました。
1) 竹木の所有者が催告後相当期間に切除しないとき
(相当期間とは具体的な事案によるが、基本的には2週間程度)
2)竹木の所有者を知ることができず、又は所在を知ることができないとき
3)急迫の事情があるとき
また、隣地の竹木が数人の共有であったときには、各共有者は、
他の共有者の同意等を得ることなく単独でその枝を切り取ることができることとなりました。
前回・今回と2回にわたり民法改正の概要を確認しましたが、
従来の権利を一部制限する内容が含まれます。
共有不動産をお持ちの方や、
発生済みの相続に関して遺産分割が未了の方は、注意が必要です。
山口会計 山口