フリーランス
2019-01-16
フリーランスのメリット・デメリット
フリーランスで働く最大のメリットは、自分の裁量で勤務時間や休日を決められることだろう。自宅で仕事ができれば通勤しなくてすみ、子育てや介護と両立しやすく、家族と過ごす時間や趣味の時間も確保できる。職場の人間関係にわずらわされないこと、定年がなく長く働けることもメリットだ。
一方で、最大のデメリットは収入が不安定なことといえる。これについては、スキルアップや業務効率化、営業努力などで対応していかなければならない。ライフプランの面では、雇用保険の基本手当や育児休業給付、介護休業給付等が受けられない、労災保険や、健康保険の傷病手当金等がない、会社員等より公的年金額が少ないなど、社会保障面のデメリットが非常に大きい。
この点を十分に理解して、フリーランスで働く人自身がセーフティネットを確保することが重要だ。
病気や就業不能への備え
フリーランスは国民健康保険に加入するのが一般的だ。会社員等の加入する健康保険と同様、70歳未満の人の医療機関の窓口での自己負担割合は3割で、高額療養費の給付もある。とはいえ、フリーランスにとって病気やけがで仕事を休むことは収入の減少を意味する。
それを踏まえ、民間の医療保険に加入して、医療費に休業補償分を上乗せした入院日額を設定することが考えられる。例えば、入院時の諸費用分5,000円に休業補償分5,000円を加えて、入院1日当たり1万円にするという形だ。
健康保険には入院や自宅療養で仕事を休んだ場合に支払われる傷病手当金があるが、一般的に国民健康保険にはない。それを補うものとして、いくつかの保険会社が扱っている就業不能保険への加入も検討したい。
就業不能保険は、入院や在宅療養で就業不能状態になった場合に、定額の給付金が毎月支払われる。給付金額は、加入時の収入に応じて、10万円、15万円など、5万円きざみで設定できることが多い。
就業不能保険はフリーランスにとってニーズが高いといえるだろう。ただし、就業不能状態になってから給付金が支払われるまで待期期間があり、60日経たないと給付金が受け取れないものが多い。したがって、就業不能保険に加入しても、最低2カ月分の生活費は別途用意しておく必要がある。
老後への備え
フリーランスのような国民年金の第1号被保険者の老齢給付は老齢基礎年金のみである。2018年度の新規裁定者の金額だと40年加入で月額6万4,941円だ。平均的な収入(賞与を含む月額換算の平均標準報酬42万8,000円)で40年間就業した会社員が15万6,336円であるのに比べると9万1,000円あまり少なく、フリーランスにとって老後資金作りは大きな課題だ。老後資金を作るに当たっては、国民年金基金、小規模企業共済、個人型確定拠出年金(iDeCo)といった税制優遇のある制度を活用したい。
国民年金基金
国民年金基金は老齢基礎年金に上乗せする公的な年金制度で、20歳以上60歳未満の国民年金の第1号被保険者と、60歳以上65歳未満あるいは海外居住者で国民年金に任意加入している人が加入できる。
終身年金2種類と確定年金5種類があり、その組み合わせと性別で掛け金月額と年金額が決まる(図表1参照)。1口目は2種類の終身年金のどちらかを選択し、2口目以降は全7種類を自由に組み合わせられる(ただし、確定年金の年金額が終身年金の年金額と同額以下になるように設定しなければならない)。加入後、年金・掛け金の額を口数単位で増減することは可能だ。
加入時の掛け金額は払い込み期間終了まで変わらない。掛け金の上限は月額6万8,000円で、全額が社会保険料控除の対象となる。受け取る年金は公的年金等控除の対象となっている。
小規模企業共済
フリーランスには退職金がないので、小規模企業共済に加入して自分で退職金を積み立てることも考えたい。
毎月の掛け金は1,000円~7万円まで500円単位で設定でき、加入後の増額・減額も可能。全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となる。
満期はなく、退職したときあるいは廃業したときに共済金を受け取る(図表2参照)。受け取り方には一括、分割、一括と分割の併用の3つがあり、一括受け取りだと退職所得控除の対象、分割受け取りだと公的年金等控除の対象となる。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
国民年金基金に加入すれば終身年金が確保できるが、年金額には物価スライドがなく、現在は利回りも低い。インフレへの備えと、より多くの老後資金作りを目指すのであれば、個人型確定拠出年金を併用したい。
個人型確定拠出年金は、運営管理機関に口座を開設し、掛け金を拠出して運用する。掛け金は5,000円以上1,000円単位で加入者が設定し、その全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となる。運用期間中の運用益は非課税。原則として60歳以降に給付金が受け取れ、一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象となる。
運営管理機関と掛け金を運用する金融商品は、加入者自身が選択する。運営管理機関によって口座管理手数料や運用商品の違いが大きいので、十分に比較検討する必要がある。
国民年金の第1号被保険者が確定拠出年金に加入する場合、掛け金の上限は国民年金基金の掛け金との合算で年間81万6,000円である。そのため、毎月拠出できる掛け金がいくらか、それを国民年金基金と確定拠出年金にどう配分するかを考えなければならない。小規模企業共済も含めた各制度の活用法について、FPは適切にアドバイスできるようにしておきたい。
確定申告
会社員は必要経費や税額の計算、納税を会社が代行してくれるのに対して、フリーランスは領収書を保管して必要経費を集計し、自分自身で確定申告して納税しなければならない。フリーランスが事業所得を確定申告する場合、青色申告の承認を受け、正規の簿記の原則に従って記帳し、貸借対照表と損益計算書を作成して提出すると最高65万円、それ以外の青色申告者は最高10万円の青色申告特別控除が受けられる。青色申告の申請をしなければ、控除のない白色申告となる。2014年から白色申告でも記帳と帳簿の保管が義務付けられたので、もうひと手間かけて青色申告し、65万円の控除を受けるとよい。
経理の知識がなくても、個人事業主向けの無料あるいは安価な会計ソフトを利用すれば青色申告に必要な書類が作成できる。クラウド型の会計ソフトなら、PCだけでなくスマートフォンやタブレット端末でも利用できる。銀行口座やクレジットカードを登録すると取引データを自動取得できたり、スマートフォンでレシートを読み込んで経費の精算ができたりするものもある。こうしたツールを活用すれば、経理処理にかかる手間や時間が省け、その分、本業に集中できる。
フリーランスの場合、売上を上げることに目が向きがちだが、経理を行うことで利益が明らかになり、仕事の進め方や効率化を考えたりコスト意識が高まったりする効果も期待できる。
なお、フリーランスの増加に合わせた税制の見直しも行われる。2020年以降の所得税、2021年度分の個人住民税から、会社員等の必要経費である給与所得控除が一律10万円引き下げられる一方、すべての納税者に適用される基礎控除が一律10万円引き上げられる(合計所得金額2,400万円以下の個人の場合)。これによって、フリーランスで合計所得金額が2,400万円以下の人は減税となる。正規の簿記の原則で記帳している青色申告者に対する青色申告特別控除の額は55万円に引き下げられるが、電子申告等の要件を満たせば、控除額は65万円となる。
(日本FP協会 FPジャーナルより抜粋)
フリーランスは色々と自由にできる事が多いが、それに伴って自己の責任も大きくなるという事を改めて感じました。
山口会計 清水